『臺灣私法』の成立過程テキストの層位学的分析を中心に

著者名
西 英昭
価格
定価 5,880円 (内消費税 280円)
ISBN
978-4-87378-999-6
仕様
A5判 上製 320ページ C3032
発行年
2009年9月

内容紹介

本書はまず,20世紀初頭に行われた台湾旧慣調査の「最終報告書」である『臺灣私法』に対して,不動産に関する「舊慣」の記述を素材とし,その先行報告書を含めたテキスト群に徹底して層位学的分析(critique stratigraphique)を施すことを第一の作業とする。それによって,『臺灣私法』に至る過程において何を論拠に何処までの議論がなされたのか,その思考の変遷・推敲の過程を辿り,或いは棄てられ,或いは採用される可能性のあった記述との間の緊張関係に目を向け,最終的な記述が選択されたことの意味を再定位する。さらに本書は,同報告書の作者達に関する人物研究(prosopography)から導かれる諸文献をも考察に含め,調査活動自体が否応なく巻き込まれた歴史的背景から,その意味を再確認する試みでもある。東洋法制史学の出発点に位置する重要なテキストでありながら,その本格的な分析が放置されてきた『臺灣私法』の再定位作業は,現在の我々のアジア認識に大幅な再考を迫る諸要素を多く提示するものである。

目次

序章
第一章 『臺灣私法』に関する基礎情報
  第一節 「調査」の時代
  第二節 調査の「範型」を求めて
    第一款 条約改正と台湾
    第二款 後藤新平「臺灣經營談」
    第三款 岡松参太郎の見解
      第一項 明治初期日本の慣習調査
      第二項 Stengelとドイツ植民法学
      第三項 膠州湾及びその他
  第三節 台湾旧慣調査の過程
  第四節 層位学的分析
第二章 「業主權ノ沿革」部分のテキスト分析
  第一節 「大租小租」部分のテキスト分析
    第一款 テキストの構成
    第二款 「大租權ノ性質」
    第三款 「時勢ノ變遷」の構成
      第一項 「大租小租ノ起元」
      第二項 「大租ノ性質」
      第三項 「大租權ノ得喪移轉」
      第四項 史料と行論の関係
    第四款 岡松参太郎「大租權の法律上の性質」を読む
      第一項 論文の構成及び内容
      第二項 Reallast
      第三項 「物権」と「債権」
      第四項 「大租權ノ性質」へ
      第五項 岡松参太郎の物権法制構想
  第二節 「地基」関係部分のテキスト分析
    第一款 テキストの構成
    第二款 基隆土地紛争事件
    第三款 事件と記述の相互関係
    第四款 舊慣立法に於ける「地基」
第三章 「業主權」の成立、その台湾社会との相互影響
  第一節 土地を巡る社会的背景
    第一款 租税・金融制度と土地に対する「權利」
    第二款 中山成太郎の構想
  第二節 「租權」と「業主權」のあいだ
    第一款 「所有」のあり方を巡って
    第二款 「租權」と「業主權」の連絡
    第三款 租税と「所有」の交錯
  第三節 「業主權」と「所有権」
  第四節 英国法由来の概念と「舊慣」の体系
    第一款 「胎」を巡る処理
    第二款 「契尾」と「登記」
第四章 「典」を巡る議論過程のテキスト分析
  第一節 テキストの構成及び予備的検討
    第一款 テキストの構成
    第二款 関係する条例・則例の予備的検討
  第二節 『第一回報告書』成立に至る過程
  第三節 『臺灣私法』への過程
    第一款 新資料の登場と山本第三論文
    第二款 松濱・早川反論と『臺灣私法』
  第四節 『臺灣私法』後の過程
    第一款 『典ノ慣習』と宮内季子の見解
    第二款 杉本―川村論争
第五章 「典」を巡る議論過程内外の諸問題
  第一節 史料の問題と立論過程
  第二節 日本人を取り巻いた背景
第六章 補論:「舊慣」と『臺灣私法』  議論の素材として  
  第一節 「舊慣」の変容
  第二節 『臺灣私法』その後
    第一款 石坂音四郎『慣習法論』
    第二款 雉本朗造と鳴海小作争議
終章
資料
あとがき
事項・人名索引

著者紹介

西 英昭(にし ひであき)
1997年3月 東京大学法学部卒業。
2000年3月 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。
2000年4月 東京大学助手(大学院法学政治学研究科)。
2005年4月 京都大学大学院法学研究科COE研究員・東京大学東洋文化研究所非常勤講師。
2006年10月 九州大学法学研究院助教授。
2007年4月 九州大学法学研究院准教授(職名変更),現在に至る。

書評

『中国研究月報』Vol.64 No.6(No.748)2010年6月号「書評」
春山明哲氏(早稲田大学台湾研究所客員上級研究員)執筆

『法史学研究会会報』第14号「書評」
松田恵美子氏(名城大学法学部教授)執筆

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