内容紹介
情動行動とは、怒り、不快、脅えなどの情動(気分)の変化を伴う動物の行動様式であり、その機序の解明は、心と脳の連関を明らかにし、うつ病や神経症・ストレス関連障害などの精神障害の治療の開発にも貢献する。編者を中心とする研究グループは、1960年代よりネコを用いた動物モデルの研究から情動行動の発現に関わる視床下部の役割について先駆的な研究を行ってきた。さらに近年、情動ストレスが視床下部を介して自律神経系、内分泌系、免疫系など神経系以外の身体の諸領域にまで広く影響を及ぼすことが明らかになった。本書は、編者らの研究成果を中心に、情動とストレスに関わる脳内メカニズムについて最新の知見を網羅するとともに、関連する臨床精神医学の展望にも触れる。精神医学、心理学、神経科学領域の専門家のみならず、今後、脳研究を志す若い研究者にも指針を与えるものとして推奨したい。
目次
第1章 情動の中枢 ――視床下部の構造と機能――
1. 視床下部の構造
2. 情動と本能
3. ネコの威嚇防御行動の発動と制御 ――Siegel,A.らの研究――
第2章 情動とストレスの脳内処理機構
1. 前頭前野
2. 海馬・辺縁系
第3章 情動と学習
1. 分子細胞レベルにおける記憶,学習機構
2. スイッチ切り学習と脳内自己刺激
第4章 ストレスモデルとしての情動反応
1. 情動研究の重要性
2. 情動行動と自律神経内分泌系および内臓病変
3. 情動行動と免疫能
第5章 情動とストレスの臨床医学
1. 小児における情動の発達過程
2. 老年期における情動とストレス
3. 情動と行動変容 ――強迫性障害をモデルとして――
4. 外傷後ストレス障害:歴史と展望
5. 大うつ病とストレス