内容紹介
本書は,恋愛心理分析小説の最高傑作の一つ『アドルフ』の作者にして,政治家,政論家,宗教思想史家,コスモポリタンであり,さらに恋愛のマキャベリスト,漁色家,賭博狂という顔も持つ八面相人間バンジャマン・コンスタン(1767年スイスローザンヌ生,1830年パリ没・国葬)の「日記」の翻訳である。モーリヤックをして「ルソー,ジッドもその足下にも及ばぬ魂の告白書」と言わしめた全心露出の「日記」の記述は,別れるに別れられぬスタール夫人との愛憎半ばする悪縁と,既婚ドイツ夫人シャルロットとの離叛再会愛憐の,愛憎と愛憐に展開する〈男女愛欲三つ巴の修羅場〉を中心とする。そこにナポレオン帝政・王政復古・ナポレオン百日天下の渦中を生きる政治家コンスタンの〈延命の変節と自由擁護の節義〉,大著『宗教思想史』執筆の〈難渋苦行〉,レカミエ夫人に対する狂恋(人生半ばの魔démon de midi)などが加わり,内容は多岐にわたる。訳文は「創作的翻訳」による彫心縷骨の擬古文体,待望の本邦初訳である。